南欧でたどった源流、チョコは「飲み物」だった

「ホットチョコレート」と欧州の歴史を紐解く

2019.03.01(Fri)佐藤 成美

元来チョコレートは「飲み物」だった

 チョコレートの原料であるカカオは、紀元前、中米のメキシコやグアテマラ付近で栽培が始まったといわれる。アステカ王国では、カカオを炒ってすりつぶし、水やトウモロコシの粉を加えて飲んでいた。これは「チョコラトル」という栄養価の高い薬で、神々の飲み物としても珍重されていたのだ。当時の中米には砂糖がなかったので、かなり渋くて、苦かったらしい。

 16世紀になり、スペイン人のコルテスがアステカ帝国に侵入し、チョコラトルとカカオをスペインに持ち帰った。スペイン人がメキシコ湾とカリブ海に突き出すユカタン半島を征服すると、カカオが交易品として海を越え、スペインの港に渡ってくるようになった。

 スペイン人は渋くて苦いチョコラトルに砂糖を加え、甘くてほろ苦いホットチョコレートに変化させた。ホットチョコレートはスペイン王宮で人気を博し、その後100年ほど、製造法は極秘になった。カカオ貿易もスペインが独占した。

 17世紀、スペイン宮廷からフランス宮廷に王女が嫁いだとき、好物のホットチョコレートを作ることのできる侍女を連れて行ったことがきっかけで、ホットチョコレートがフランスに伝わり、さらに17世紀の終わりにカカオ貿易が自由化されるとヨーロッパ諸国へと伝わった。

 スペインは甘いホットチョコレートの発祥の地だったのだ。いまもなおスペインで盛んにホットチョコレートが飲まれているのは、歴史が長いからだろうか。

ココア、そして固形チョコレートの誕生

 スペインの王女がフランスに嫁ぐとき、わざわざ侍女を連れていったのは、ホットチョコレートを作るのがとても難しかったからだ。すりつぶしたカカオに、砂糖を加え、お湯に溶かす。簡単な工程に感じられるが、カカオは脂肪分を50%ほど含む。あまりにも脂肪分が多いため、砂糖などを混ぜにくく、また、お湯にも溶かしにくかった。面倒なホットチョコレートは、お湯を注ぐだけで飲めるコーヒーや紅茶の普及に押されがちだった。

 1828年にオランダのカスパルス・ファン・ハウテンがカカオ豆から脂肪分を除く脱脂技術と、渋味を除くアルカリ処理の技術を発明した。この画期的な技術により、お湯に溶けやすいカカオの粉末ができた。これがココアである。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る