正しい方法で、少しでも安くしたい――節税に対する経営者の思いだろう。しかし、田中卓也税理士事務所代表の田中氏(オールアバウト「税金」ガイド)は、中小企業経営者らが「節税」について正しい知識を得ず、会社の価値を高められていないケースが多い、と指摘する。中小企業が知っておくべき良い節税、悪い節税について考えてみた。(JBpress)

【→前回:その節税対策、むしろ損していませんか?

役員報酬を増やす

「節税というと利益を圧縮するために、経費を増やそうという話になるのですが、経費を増やすには支出も伴うということも考えるべきでしょう」

 前回のコラムでそう指摘した田中氏は、会社の価値を高められない節税が多いと言う。

 では具体的に「節税」には、どんな考え方が必要で、その方法とはどのようなものだろうか。

 田中さんは具体例を教えてくれた。

「税金を減らす方法として、役員報酬はなるべく高くすることをアドバイスしています」(田中氏)

 「役員報酬」は損金として計上できるというのがポイントで、中小企業の節税対策ではもっともシンプルな方法である。

 損金として計上できる役員報酬を高く設定すると、個人の所得税と住民税は上がるが、それ以上に法人税での優遇が上回り、一定の金額までは節税になることが知られている。

 ただし、役員報酬については、「定期同額給与」というルールがある。要は毎月、一定の給与でないと損金にはならず、そのときの状況により増減させてはならない。

「いくつか注意点があるものの、ぜひとも活用したい節税対策」と田中さんは強調する。

 この方法についてはもう一点、メリットがある。

「将来、会社に何かあった時に、自分で持ち出しをしてでも会社を立て直さなくてはならないことがあるかもしれない。その時のためにも、役員報酬は高くもらっておいてくださいと言っています」