企業経営者にとって欠かせない節税対策。正しい方法で、少しでも安くしたい、というのは切実な願いだが、簡単ではない。そのパターンは、不動産の有無や業態によって大きく異なるし、加えて関連法律もさまざまに変わるからだ。来年には消費増税が決定し、ますます税金が気になってくる。中小企業が知っておくべき良い節税、悪い節税について考えてみた。(JBpress)

法人税を納めているのはたった3割?

 平成31年度の税制改正大綱が12月14日に発表された。消費税率10パーセントを平成31年10月に確実に実施する、と明記された点にも大きな注目が集まった。

 4年前の2014年に消費税率を5パーセントから8パーセントに引き上げた際は、駆け込み需要が大きくなり、その反動により個人消費がマイナス3パーセントまで冷え込んだ苦い経験もある。この教訓をいかに活かすことができるかが、今後の課題になる。

 また、年の瀬の風物詩になっているのが「年末調整」。企業の経理担当者や中小企業の経営者にとっても一大イベントである。

 こうして考えると「税金」は、毎日の生活から切っても切れない、でもできる限り払いたくないというモノ、というのが本音だろう。

 そこで個人や中小企業の税務問題に詳しい、税理士でオールアバウト「税金」ガイドでもある田中卓也氏(田中卓也税理士事務所代表。 ”正しい決算、正しい申告だけで満足ですか”という理念をかかげ、事業計画の作成・サポートを中心に据えた革新的な事務所経営を行う)に中小企業の、特に経営者が節税するために必要な視点について聞きに行ったのだが――。

「節税対策ということがよく言われますが、国税庁から発表されている会社標本調査によれば、そもそも儲かっている会社というのは35パーセントちょっとしかありません。つまり、おおよそ65パーセントが法人税を納めていないという実態があります」

 田中さんはそう指摘した。

 会社の場合、お金を貸してくれる場所、つまり「対銀行」という側面が見逃せない。有利な融資を受けるために、毎月毎月の収支を黒字にしたいという会社がある一方で、利益が少なくてもいいと考える会社もある。

 前者の「黒字にしたい」のは起業歴が浅く、これから信用を得なくてはならない会社だ。

 後者の「収支が少なくてもいい、赤字でもいい」と考えるのは、すでにある程度の信用ができている会社に多い。

「納税というのは信用力の担保でもあるのです。ある程度の税金を納める、黒字に決算する、納税証明書を取らないとそもそも銀行の融資審査が通りにくいという実情がありますからね」