ここ2、3年で、これまでの日本型の組織では、テクノロジーの進化に追いつかないことが明白になってきた。大企業とベンチャーが手を組み、総力戦で世界に立ち向かおうとする日本の構図が顕著になってきた様子がうかがえる。

「オープンイノベーション」とは、そうした流れの中で必然的に使われるようになったキーワードであり、一つの手法として「出島戦略」が注目されていることを前回紹介した。
【成長鈍化する大企業が求める「出島」とは何か/http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55870

 この10年間の日本の現状を振り返り、このオープンイノベーションへの取り組みについてニッセイ基礎研究所の中村洋介氏にお話を伺った。

劇的に改善したベンチャーを取り巻く環境

「ベンチャーを巡る環境は、リーマンショックを機に苦しくなりました。景気後退で事業環境が厳しくなる中、資金調達が難しくなり、資金繰りに行き詰るベンチャー企業も多くありました」

 そう指摘したニッセイ基礎研究所の中村洋介氏が、当時の状況を概説してくれた。

「ベンチャー企業に投資するベンチャー・キャピタル(VC)は、株価や新規上場企業数の低迷、投資先ベンチャーの経営破綻等を受けて、投資収益が大きく悪化しました。その結果、VC等投資家の活動が停滞します。外部から資金を集めて赤字先行で事業を拡大させることが多く、経営資源も乏しいベンチャー企業にとっては、この資金調達環境の悪化は死活問題でした。加えて2011年3月には東日本大震災が発生するなど、先の見通せない環境は――とりわけ、お金も時間もかかる『ものづくり』や『研究開発型』のベンチャーはそうでしたが、全体としてつらい時期だったと思います」

 ただ、その時期に変化の兆しも見られた。

「ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS)や、スマートフォンなど新しい分野のITベンチャーが多く登場してきた時期でもあります。TwitterやFacebookが日本に上陸し、iPhoneが発売され、スマートフォン(スマホ)の普及が進みました」

 実際、iPhoneが日本で発売されたのが2008年。実は10年ほど前のことである。

 こうした流れを受けて、ソーシャル・ゲームやスマホ向けアプリ等、SNSやスマホ関連のITベンチャーが次々と産まれる。

「他にも、クラウド・コンピューティングやアド・テクノロジー(インターネット広告)等、IT分野に新しい投資テーマが見られまました」(中村氏)

 創出される市場の成長性は魅力的であり、株式市場でIT系新興企業の株価も好調だったことから、IT分野に力を入れる投資家も増え始める。

 この時期について、中村氏は以下のように解説する。