中村氏は言う。
「最新の成長戦略『未来投資戦略2018』でも、開業率やVC投資額の引き上げ、ユニコーン企業の創出等の成果目標が掲げられています。昨年には世界で戦えるベンチャーを育成する政府のプログラム『J-Startup』もスタートしました。超スマート社会Society5.0の実現、自動運転やAIの活用推進等、テクノロジーを最大限活用していくことを目指す内容で、ベンチャーにとってはビジネスチャンスが広がっています」
ここ数年、大企業の投資が増えていることもあり、大型の資金調達を実施するベンチャー企業も増えている。足もとでは、投資競争の過熱感や、景気減速によるピークアウトの懸念も指摘されるが、ここ数年で大きくベンチャーを取り巻く環境が改善したことは間違いない。
どのようにベンチャー企業と連携していくか
さて、ここで大企業である。これまで自前主義で強みを築いてきた大企業だったが、それでは立ちゆかなくなる時代を迎え、ベンチャーとの連携(投資・提携等)へと活路を見出し始めた。
そこで生まれてきたのが「出島戦略」だということもできる。たとえば、親会社から切り離したCVCをつくり、投資を行うことなどもその一手だ。
「CVCとは、事業会社がベンチャー投資を行うための活動組織のことです。投資子会社の設立や自己資金によるファンド組成等が該当します。投資リターンを狙うだけでなく、自社の事業に対してシナジー効果が期待される技術やビジネスモデルを持つベンチャーを発掘して、投資します。将来的に大化けするような可能性のあるベンチャーに『つばをつけておく』、投資を通じて新しいトレンドを把握する、といった意味合いがあります。このCVCの投資は世界的に増加傾向にあると言われています。グーグル、インテルといった米国勢だけでなく、アジア勢のCVCも積極的に投資活動を行っているようです。ただ、米国や中国と比較すると、日本のCVCの投資はまだまだ圧倒的に少ないのが現状です」
世界的なトレンドCVCの日本での実例
日本国内のCVCについてもう少し詳しく見てみよう。中村氏は言う。
「大企業本体によるベンチャー投資も増加傾向ですが、機動的に投資活動を行う『別働隊組織』として、CVCを傘下に設立する事例が相次いでいます。アベノミクス前の時期は通信・インターネット系事業会社傘下のVCが投資活動を広げていましたが、最近ではメーカー(オムロン:オムロンベンチャーズ等)、放送(フジテレビ:フジ・スタートアップ・ベンチャーズ等)、鉄道(東日本旅客鉄道:JR東日本スタートアップ等)といった幅広い業種でその動きが広がっています」
ネット系企業に限らず、放送、メーカー、不動産、鉄道など幅広い業種にその動きは広がっており、多様性を増しているわけだ。