所得を分散する方法
日本の税制の特長を利用した節税方法として、自分の妻に所得を分散するという方法もある。
中小企業の場合、妻が会社の仕事を手伝っているケースは少なくない。その場合には、社長に支払っていた給与の一部を妻に分けて支払うことで節税ができる。
この場合は、会社の経費という点では同じ世帯に入ってくるお金なので法人税の節税にはならないが、逆に個人で支払う所得税と住民税を減らすことができる。
日本の所得税が累進課税となっているため、一人で多くの給与をもらうよりも、二人で分けてもらった方が税の負担が小さくなる。同時に、給与からは「給与所得控除」を差し引くことができる。給与所得控除は、給与の額が大きくなるにつれてその割合が小さくなるから、分散させて二人で給与をもらうことで節税になるというわけだ。
先に挙げた「役員報酬」による節税との組み合わせで、「夫婦同額の役員報酬」という方法もある。
小規模企業共済の利用
田中氏は、別の方法も提案してくれた。
「これらとは違った方法の節税として、小規模企業共済をお勧めすることも多いです」
小規模企業共済とは、中小企業の役員などが退職や廃業した後の生活資金を準備する制度だ。
この制度は、小規模事業者の老後の資金の準備を促進するという主旨のもと、国により取り扱われている。
最大の特長は、掛け金が全額控除となり、最大で年間84万円控除できることだ。
また、この共済金を受け取るときは、一時金で受け取ると退職所得扱いとなり税金が軽減され、分割で受け取ると公的年金控除の適用があり、やはり税金が軽減されるというメリットもある。
「節税対策で民間の生命保険に入る中小企業の経営者も多いですが、それに比べて保証金額が小さいというデメリットはあるものの、受取金額、支払金額に対する必要経費算入額も大きいので、この小規模企業共済は相当に節税効果が大きいと言えます」
この小規模企業共済に加入したうえで、保証については足りない分を民間の生命保険で補う方法を田中さんは勧める。