中国、海上演習で空母「遼寧」に戦闘機着艦

中国海軍の海上演習で、同国唯一の空母「遼寧」に駐機されたJ15戦闘機(2018年4月24日撮影)。(c)AFP PHOTO〔AFPBB News

1 先進性と後進性が混在する新大綱・新中期防

 2018年12月18日に閣議決定された防衛計画の大綱(新大綱)と平成31年度から平成35年度までを対象とする中期防衛力整備計画(新中期防)は、中国が間髪を入れず「強烈な不満と反対」を表明した。

 「中国の正常な軍事行動について脅威をあおっている」としたことは、初めて抑止力の効いた大綱・中期ができた表れだ。

 中国は、中国の軍事的活動の高まりに対して、日本に「慣れろ」と魔法をかけてくるが、今後は決然と中国の「異常な軍事的冒険」に立ち向かう日本国民の覚悟と防衛への積極投資が望まれる。

 一方、厳しい見方をすれば新大綱・新中期防はイノベーションの力とバックギアの力が混在しており、さらなる改善と修正がなければ国民を守り切り、日米が合理的に一体となった作戦を実行できるとはならないだろう。

 さらに、日本の防衛理念の根底にあるものを見落としてはならない。

 それは、中国や北朝鮮の軍事的脅威が現実のものとなっているにもかかわらず、「自らが空白となり周辺諸国の侵略を誘発しないために『基盤的防衛力』を保持する」、すなわち、ショーウインドウに装備品を並べることが基本となっている点だ。

 この考え方ではもはや日本を守り切ることはできない。人も急速に戦力化しないし、装備品も予算カットで散々買い叩かれたことから、防衛産業には急速増産できる体力は既にない。

 「脅威に対しては、脅威に対抗」できる現実の防衛力を持たねばならないということだ。

 新大綱で何度も繰り返されている「これまでに直面したことのない安全保障環境の現実の中にある」という認識ならば、国民や政治家はその危機感を感じ取るべきだろう。

 すなわち、財務省主導で、一応、装備品や弾などを並べておけば済む時代は終わったのである。

 動かすことすらままならない。そのうえ、さらに中期計画の節減をしようとしているおかで、南西諸島の切り札である対艦ミサイル数が削られ、あるいは「F35」を完成品で購入するため、日本の航空産業は大打撃を被ることになる。

 この岩盤の思考を切り崩さなければ国民を守り切ることはできない。「国破れて国家予算なし」である。

 一方、今から急速に中国に追いつこうとすると際限のない軍事費の増額になり、ソ連のように経済破綻することになるかもしれない。

 それを合理的に解決する1つが、新大綱のサイバー・電磁領域などでの優越の獲得(頭脳や神経に作用して無力化する、一般的に「非物理的打撃」という)である。

 そして、2つ目は前大綱の深化として、日米を貫く領域横断の作戦に基づいた「勝てる戦略」の明確化が必須である。

 しかし、領域横断の戦いの理解が不十分なため戦略が確立されていない。前大綱が深化されていない問題がここにある。