大きな理由の1つがコスト削減だ。最初は日本企業に部品を納入させて、技術を吸収したら日本企業は“お払い箱”。内製化によってコスト削減というのが、中国メーカーの典型的なパターンだ。
ものつくり大学(埼玉県)の田中正知名誉教授は「機械さえ導入すれば誰でも作れる装置産業では、その傾向はより一層強くなるだろう」と語る。「素材分野はまだしも、電子部品の製造はもはや日本企業だけの“技術”ではなくなった」(同)。
日本メーカーと同様の電子製品を中国メーカーがつくれるようになった今、日系企業が中国産スマホのサプライチェーンにとどまることは困難になりつつある。A社はファーウェイ以外の中国メーカーにも営業をかけたが、取引はしてもらえなかった。
足元では中国企業が追い上げる。英国の市場調査会社IHS Markitによれば、2017年のスマホ用液晶パネルの出荷シェアは、日本のジャパンディスプレイ(東京都港区)が首位を維持したものの、2位に天馬微電子(中国)が浮上し、3位LG(韓国)、4位シャープ、5位BOE(中国)という順になった。有機ELと大型液晶を手掛けるBOEは、2010年以降、政府の資金をバックにディスプレーメーカーとして急成長し、中国全土に巨大工場を続々と立ち上げている。
中国の華東地区で光学機器を生産する工場に駐在した日本人駐在員C氏は、中国企業の猛烈ぶりを間近に見てきた。そのC氏が次のように語る。