「中国企業は『できない』とは決して言わない。日本企業から見れば、彼らの仕事は“やっつけ仕事”でしかないけれど、それでもできてしまうから恐ろしい。果たして中国企業は、日本企業が四つに組んで戦える相手なのでしょうか」

 日本の業界関係者からはこんな声が漏れる。「パソコンが“オール中国”でできるようになったのと同じように、スマホも早晩、その時代が来るでしょう」

日系メーカーが次々に蘇州から撤退

 上海に隣接する江蘇省 蘇州市は、世界の電子機器メーカーの集積地として知られている。市内の工業団地には多くの下請けメーカーが集まり、中国第二の工業都市としての地位を築いてきた。

 その蘇州で、2017年から2018年にかけて日系工場の閉鎖が相次いだ。スマホ向けの中小型液晶パネルでは最大手といわれるジャパンディスプレイは2017年、中国に3カ所あった拠点のうち、バックライトの生産工場である深セン工場と、デバイスの組み立てを行っていた蘇州工場を売却した。

 経営再建中のジャパンディスプレイは、「2017年8月の中期計画で、従来までのモバイル事業80%、ノンモバイル事業20%という比率を見直し、モバイル事業を50%にまで下げ、非モバイル事業に力を入れる」(広報)という戦略を立てている。

 また、偏光フィルムで世界的シェアを持つ日東電工(大阪市)は、蘇州工場で行っていたモバイル系のプリント基板事業を日本メクトロン(東京都港区)に譲渡し、偏光フィルム事業については中国内の他の工場に移管させることで2018年1月に蘇州から撤退した。

 続いて同年8月、液晶バックライトを生産していたオムロンも工場を閉鎖した。オムロンは中国で20の拠点を持ち、電子部品を手掛ける複数の工場を稼働させてきたが、同工場の閉鎖で中国におけるモバイル向け電子部品の製造拠点はなくなった。「今後は制御機器の分野を拡大する」(同社広報)方針だという。