サッカーは関係者がみんな”共犯”関係にある
――なるほど・・・。
「アントラーズの場合、やるなら徹底的にやる。結果がわからないからチビチビ投資しようとかではなく、デジタルの波は必ず来るんだから、徹底的にやろう、と。お金も出して自分たちで作っていこう、それは本当にすごいなと思います。もちろんそれは、ブランド力があるからこそ資金調達ができるという側面もあるのですが」
――そういうものを参考にしながらこの栃木から、新しいサッカーを健全な商売にするという思いが強い。
「そうですね」
――地元の地域の大事な場所を創る。そのために、(サッカーという)コンテンツが魅力的なのに商売としては成り立ちにくかったものを変えていく。これはサッカーやスポーツ業界以外にも参考になるのかもしれません。
「最近のトレンドではありますよね。共創マーケティング、お客さんも巻き込みながら一緒に成長していく。キングコングの西野さんがやっている絵本(編集部注:クラウドファンディングを使ったり、製作を多くの人と分担する、購入者もイベントを立ち上げられるなどステークホルダーを増やしていきベストセラーとなった)なんかもその例ですよね。あれは共犯者にするみたいな感覚かな。それこそサッカーって関係者がみんな共犯関係なんですよね。選手もクラブもサポーターも巻き込まれていく。自分が支えているぞ、という気持ちが、よりサービスや機能を好きにさせていくんだと思います」
――確かに共犯者ですね。
「スナップマートのアプリのときも、最初にインフルエンサーの人に写真を売ってほしい、とお願いして回ったんです。ひとりひとり。結局1万枚くらい集めたんですけど、サービスが始まったときに、その人たちが当事者のような気持ちになってくれて、頼んでないのに宣伝をしてくれた。企業もお客さんと対面するんじゃなくてもっと手を取り合って一緒になってやっていくスタンスがあると、いいのかなと思いますよね」
――toCの在り方が業態問わず変わってくるのかもしれません。
「そうですね。一緒に作ろうという余白みたいなものって魅力ですよね。不完全な感じのもの。アイドルも似ていますよね。AKBさんとか完璧じゃないから俺たちが支える、という感覚になっていく」
――栃木さんも。
「まだ不完全ですから、どんどん関わって好きになってもらいたいなと思います」
先日、J2のレギュラーシーズン全日程が終了した。栃木SCは17位。2015年以来のJ2を戦い切ったが、”えとみほ”さんのチャレンジはここからが本番だ。
来シーズンに向け、課題と向き合い、地域、サッカーの魅力と対峙していく。徹底的に――。サッカー界の新しい風が、栃木から生まれていくかもしれない。