コンテンツの魅力とお金が釣り合っていない

――なるほど。

「やっぱりサッカーをちゃんと儲かるビジネスにしていきたいんですね。コンテンツとしてすごく魅力があるのに、それがうまくお金に変わっていない。現に儲かっていないですから。先ほどの話じゃないですが、企業さんの善意みたいなもので成り立っていて、儲かるから投資するというわけではないんです。でも、たとえば今、Jリーグより後に生まれたMLS(メジャーリーグサッカー)がとても調子よくて、観客動員も増え続けています。サッカーってヨーロッパで生まれたスポーツなんですけど、それをうまくアメリカナイズしていることが好調の要因だと思っていて。MLSってNBAとかNFLのような雰囲気があるんです。エンタメの要素、ショーを楽しむみたいな感覚があります。」

――そういう要素があってもいい。

「一部ではそういう観点があってもいいと思っています」

――一方で、スポーツと儲けるは、観る側の拒否反応もあると思います。

「ヨーロッパや南米のサッカーが好きな方には、MLSのようなスタイルは『サッカーの良さが消えてしまう』と否定的に捉えられますね。ただ、私はやっぱりなにはともあれお金を儲ける体質にしないといけないと思います。プレーする選手はお金がもらえなくて、フロントの人はブラック労働・・・それでは誰も幸せにならないじゃないですか。競技自体の発展もしていかないと思います。エンタメ的な要素と言ったのは、地域の人が何気なく『暇だからサッカー観に行こうか』みたいに思えるような、勝ち負け関係なく行って楽しかったって思えるコンテンツにしたいからです。シンプルですけど、すごく大事だと思っています」

――チームも、サポーターやスポンサーといったステークホルダーも、全体の満足度を上げるというのはとても大事ですね。

「サッカーって私の中で特別な競技で、他のプロスポーツみたいな娯楽色が薄いと思うんですね。サポーターもコンテンツの一部であり、応援することでチームを勝たせてくれるクラブを支える存在にもなっている。そういう文化があるからみんなにとって人生の一部になっている。日常の中で仕事でもない、趣味ともちょっと違う、人生にとって大事なものが、『地域にある』って素晴らしいことだと思っています。私は、富山の生まれなんですけど、私が子どもの頃の富山にはそういうプロスポーツがなくて、スポーツというとジャイアンツをテレビで見るくらいしかなかったですから」

――はははは。

「でもそうじゃなくて、地域に自分たちのクラブがあって、自分たちで盛り上げて勝たせようとする。選手やクラブの中の人間だけではなく、サポーターにとってもひとつのライフワークとして存在している。そのJリーグにある理念というか感覚がすごく好きなんですよね。」

――人生に大事なものが身近にある、というのは素敵です。

「はい。だから栃木のサポーターの皆さんも真剣で、クラブが良くなっていくための変革については思った以上に好意的に受け止めてくれていると感じています。うちの場合はリアルにお金がないということをサポーターも分かっているから、『変えて欲しい』『もっとお金を集めてチームを強化して欲しい』と考える人が多いのかもかもしれませんが」