「既存店売上高減少で株価急落」「増床で売上高増加へ自信」・・・。全国規模の流通企業の業績記事で、冒頭のような見出しを目にした読者は多いはず。
スーパー、衣料品など多種多様な大手小売企業が存在するが、業績のモノサシとなっているのが月次、あるいは四半期ごとに「既存店」がどの程度売り上げを記録したかだ。当然、多ければ株価がプラス方向に動くのは言うまでもない。
「既存店売上高」という言葉は、新聞や経済誌ではすっかりお馴染みとなっている。だが、長年使われてきたこのモノサシが、今、岐路に立たされているのだ。
地方自治体が反旗を翻した
「加茂市、衣料品販売大手しまむらを刑事告発」・・・。2009年、主要紙の地方面にこんな見出しが躍ったことをご存じだろうか。
新潟県の中部にある加茂市が、しまむらの増床計画に「待った」をかけた。しまむらが県に増床計画を届け出たあと、加茂市は、売り場面積の拡大を禁じる独自の条例を制定し、計画の撤回を求めて刑事告発に至ったのである。
結局、告発の中身を精査した県警は、2011年1月、同市の条例適用に無理があるとして、事実上立件を見送り、騒動は一段落した形になった(参考:読売新聞の記事)。
騒動の過程では、法律の専門家の間から同市への批判が噴出した。条例が特定企業を狙い撃ちにするもので、あまりにも強引だと受け止められたからだ。
全国の自治体は同市の動きを注視していた。一方、槍玉に挙がった格好の流通界は、事の成り行きを、声を潜めて見守っていた。