彗星着陸機フィラエなど欧州の豊富な経験を生かして
MASCOT成功の背景には、日欧の10年以上にわたる長い協力の歴史がある。日本は初代はやぶさのミッション中、後継機としてより先進的な100kg級の着陸機を検討した。そして、着陸機の開発運用で経験豊富な欧州と検討を進め、日欧共同で「マルコポーロ」ミッションを欧州宇宙機関(ESA)に提案したのだ。提案は通らなかったものの協力関係は続き、はやぶさ2を実現するにあたり、欧州が着陸機で参加するよう招待した。
欧州は2014年、世界で初めて彗星に着陸機フィラエの着陸に成功、さかのぼれば2005年に土星の衛星タイタンに着陸機ホイヘンスを着陸させた実績など、豊富な経験をもつ。その知見がMASCOTにどう生かされたのか。
「これほどの観測装置は、日本では準備できない。欧州が過去に開発した着陸機の技術を応用し、短期間で小型軽量の観測装置を準備できた。例えば、彗星探査機ロゼッタに搭載された着陸機フィラエを作った人たちがMASCOTプロジェクトを立ち上げていて、MASCOTのバッテリや搭載コンピューターはフィラエとかなり共通化しアップグレードされている。フィラエの運用の経験が生かされている」(岡田准教授)。
探査の実際―予定の16時間を超えてフル稼働
では、実際にどんな探査が行われたのか。はやぶさ2は10月3日10時57分20秒(日本時間)に、リュウグウの高度51mでMASCOTを正常に分離。分離直後の映像がはやぶさ2からとらえられている。
当初心配されたのは、MASCOTが小惑星リュウグウに着陸後、分光顕微鏡がリュウグウに接する姿勢に直せるかという点だった。分光顕微鏡はリュウグウ表面に接地しないと、正しい観測を行うことができないからだ。姿勢が正しくないときは、重り付きアームを回転することで姿勢を変えるし、岩の間に挟まってしまったときはホップして抜け出す。
ドイツ航空宇宙センター(DLR)の発表によると、着地後MASCOTは自律的に姿勢を修正したが、好ましいポジションにならなかったため、ホップする指令を地上から送信。正しい姿勢に修正することができたという。