その最大要因は米国との貿易戦争である。だから、対外強硬論を推し進めた習近平に責任があると考えたのだ。しかし、尖閣諸島や南シナ海を挙げるまでもなく、対外膨張主義を始めたのは習近平ではない。21世紀に入った頃からの共産党の一貫した方針である。

 それを支えたのは、どの国でも同じであるが、「中国は偉大な国だ」と思いたがる一般民衆である。戦前の日本の軍部と同様に、共産党は民衆の夜郎自大的な思いを煽ったのだ。いったん民衆が自国を「すごい国」と思い始めると、それをなだめるのは容易ではない。もし、習近平がトランプに頭を下げて南シナ海から撤退したら、民衆は習近平を弱腰と強くなじるだろう。それこそ失脚の原因になるかも知れない。

 そして、貿易戦争はもっと始末が悪い。トランプが言うように、米国への輸出を減らせば、それは国内に出回る資金の減少を意味し、バブル崩壊の引き金になりかねない。また、1970年代から1990年代にかけて日本の自動車産業が行ったように、工場を米国に移せば、中国で失業が大量に発生する。

習主席「貿易戦争に勝者なし」 BRICS会議でトランプ氏けん制

南アフリカ・ヨハネスブルクで講演する習近平国家主席。世界的な貿易戦争で「勝者は出ない」と述べ、米国のトランプ政権を牽制した(2018年7月25日撮影)。(c)AFP PHOTO / GIANLUIGI GUERCIA〔AFPBB News

 習近平は追い込まれてしまった。そして、それは中国共産党支配が追い込まれてしまったことに他ならない。習近平の危機と共産党の危機は同義語である。

 北戴河に集まったOBや現役幹部はバカではない。数年前からこのような事態を想定していた。だからこそ、その困難を乗り越えるために習近平への権力集中を容認し、習近平もそれに乗ったのだ。しかし、トランプから想定していた以上に強い癖球を投げつけられてしまった。現在、その対応に苦慮している。その右往左往が、「北戴河会議で習近平がOBに吊し上げられる」という話を作り上げてしまったのだろう。

 紙幅がないために詳細を述べることはできないが、この一連の動きは、中国共産党の支配が終わり始めたことを示している。

 経済の繁栄をレゾンデートルとした共産党支配は行き詰まった。共産党支配崩壊の1ページ目が開いたと言える。だが、それはまだ1ページ目に過ぎない。強力で巨大な中国共産党の支配が終焉するには、これから長い時間と多くの悲劇が必要になる。