連結売上高29兆3795億円、営業利益2兆3998億円、純利益2兆4939億円――。日本企業で過去最高となるこの途方もない数字は、2018年3月期決算でトヨタ自動車がたたき出したものです。
しかし、その決算発表会見の席上で豊田章男社長が見せた表情は、極めて厳しいものでした。
「自動車産業は今、100年に一度と言われる大変革の時代に突入しています。ライバルも、競争のルールも変わり、まさに未知の世界での生死を賭けた闘いが始まっているのです。新たなライバルとなるテクノロジーカンパニーは、われわれの数倍のスピードで、豊富な資金を背景に新技術への積極的な投資を続けています」
豊田社長はこう危機感を露にしたのです。
そうなのです。トヨタを含む国内の自動車メーカーは今、かつて経験したことのない激流に直面しています。この荒波を乗り切り、新たな航海に乗り出すことができるのか、あるいはあえなく力尽きて激流に飲み込まれ、大海の藻屑となるのか――。
「自動車王国・日本」を支えてきた自動車メーカーは、まさにその瀬戸際に来ているのです。30兆円近い売上高を誇るトヨタとて、このピンチを乗り越えられる保証はどこにもないのです。おそらく、そのことを誰よりも痛感しているのが下請け企業も含めれば100万人以上の雇用を背負っている豊田章男社長なのです。
遅れている日本の自動運転に向けての動き
しかし、残念ながらその危機感は、ほんの一握りの人にしか共有されていない。私にはそう思えてなりません。
今年(2018年)1月、ラスベガスで開催されたエレクトロニクスの見本市「CES2018」では、次世代自動車の開発に関わる多くの企業がブースを構えていました。そこを見て痛感させられたのは、「もはやEVは最重要テーマではない」という事実でした。次世代自動車産業のテーマは、「完全自動運転」なのです。
翻って日本を見渡してみると、自動運転に向けての動きは、自動ブレーキシステムや前方の自動車を自動追尾するシステムといった「運転支援」の話題がメインになっています。完全自動運転とは格段の開きがあると言わざるを得ません。