大学の教職課程はどこへ向かうのか。

 前回の記事では、教職課程のコアカリキュラムは、2000年代以降、折に触れてその必要性が主張されてきたものではあるが、その内実が、教職課程のカリキュラムの「モデル」「参考とすべき指針」ではなく、突如として、課程認定の審査基準にもなる形で「国家基準」化されたのは、まさに今回の教職課程の再課程認定においてであることを指摘した。

 そうした「国家基準」化の問題点がどこにあり、今後の大学における教員養成にどのような影響を及ぼすのかについて考えてみたい。

はじめの一歩でしかない・・・

 まず、確認しておかなくてはいけないが、今回の再課程認定において提示された「教職課程コアカリキュラム」は、教職課程における「教職に関する科目*」に関してのみである。

 ただし、そうなった理由は、文科省の側で「国家基準」化に対する躊躇が働いたためというよりは、「教科に関する科目」が、学校種の違いや教科の数を想像すれば容易に分かるように、あまりに多岐にわたるからである。率直に言ってしまえば、すでに存在する「英語教育コアカリキュラム」(文科省の委託事業として、東京学芸大学が2015~16年度に作成)を除けば、作成が間に合わなかったと考えたほうがよい。

 だからこそ、今回の「教職課程コアカリキュラム」には、英語以外の「教科におけるコアカリキュラムについても今後順次整備されることを望みたい」とわざわざ明言されているのである(教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会教職課程コアカリキュラム」2017年)。

 その意味では、教職課程のコアカリキュラムは、現状では教職の専門科目にのみ定められているが、今後は教科の専門科目も含めて、すべての教職課程カリキュラムに広げていくことが想定されている。おそらく次回の教育職員免許法の改定と再課程認定の時期までには、各教科のコアカリキュラムが出揃っているという状況が、文科省にとっての理想形ということなのだろうか。

* 各教科の専門性に関わる「教科に関する科目」ではなく、教職の専門性に関わる科目。科目名称を例示すれば、「教育原理」「教育心理学」「教育相談」「教育課程論」「各教科の指導法」「生徒指導論」「進路指導論」「特別活動論」など。これらの科目は、教員免許状の学校種や教科の違いにかかわらず、原則として共通して履修する。ただし、以前の記事で紹介したが、厳密に言うと、改正後の教育職員免許法では、「教職に関する科目」「教科に関する科目」という区分はなくなり、「教科及び教職に関する科目」へと大括り化されている。