「教職課程コアカリキュラム」導入の背景にあるものとは。

 前回の記事では、戦後の大学における教員養成の仕組みについて概観したうえで、2017年度に申請が受け付けられた今回の教職課程の再課程認定における従来からの変更点を確認し、結論的には「教職課程コアカリキュラム」の導入こそが、きわめて「異例」の措置であることを指摘した。

 今回の記事では、いったいなぜ、教職課程コアカリキュラムが導入されることになったのか、その背景や政策的な狙いについて論じたい。

発端としての「在り方懇」

 今回の教職の再課程認定において現実化した教職課程コアカリキュラムには、実は、それなりの前史がある。発端となったのは、今から遡ること15年以上前の2001年。「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(在り方懇)」が、「今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について(報告)」において、「モデル的な教員養成のカリキュラム」の作成を提案したことである。

 当時、この報告が出された背景には、いかなる問題意識があったのか。

 社会と学校が大きく変化する中で、学校教育にも新たな課題や役割が求められており、そうした課題を担うことのできる教員の育成のためには、大学の教員養成の充実が喫緊の課題となっている、といった一般論はさておくとしよう。実は報告書には、以下のような当時の大学における教員養成をめぐる事情が、赤裸々に明示されていた。

 端的に言って、国立の教員養成系大学・学部といえども、そこでの教員養成に従事する大学教員の間には、「アカデミシャンズ(学問が十分にできることが優れた教員の第一条件と考える人たち)」と「エデュケーショニスト(教員としての特別な知識・技能を備えることこそが優れた教員の第一条件と考える人たち)」との対立に象徴されるような認識のずれが存在し、学生に対する教育が、「(大学)教員個々人の裁量に委ねられている」といった批判を受けてきたというのである。