IRを10カ所つくれば6兆円という皮算用

 経団連や大和総研のレポートでは、シンガポールと似たような大きさのIRが日本にできた場合の「経済効果」を試算している。IRの「収入」としては、シンガポールにある2つのIRと同じ程度の年間3300億円や2100億円といった数字が使われたようだ。IRの「売上」ではなく「収入」という言い方をしたのは、カジノでのIR側の「勝ち分」(お客の負け額)が決算で公開されるためだ(ちなみに、東京ディズニーリゾートで知られるオリエンタルランドの売上高は年間4700億円ほど)。

 経団連等の試算では、IRでの消費は、IRでの仕入れや従業員が行う消費を通じて他の産業にも波及し、結果的にIR以外の産業での消費も潤うとしている。このような波及効果も加味して、金額に若干の差はあるが、IR1カ所あたりおおむね6000億円の経済効果を経団連や大和総研は試算している。

 ただし、この「経済効果」のうち、GDP、すなわち付加価値額となる部分は、実は6割弱に過ぎないとレポートの中には記されている。冒頭、新聞の見出しに踊っていた金額は、付加価値換算する前の総投入額であり、GDPがその分増えることを意味していない。

空から消費が降ってくるのか?

 経団連や大和総研などの調査機関が行ってきた試算には、他にもトリッキーな落とし穴がある。

 第1に、あたかも数千億円もの観光消費が空から降ってきたかのような設定で話が進められている点だ。