国際エネルギー機関(IEA)が3月にまとめた統計によると、昨年(2017年)の二酸化炭素(CO2)排出量は前年と比べて1.4%増え、325億トンで過去最大となった。ここ数年、横ばいのように見えた排出量がまた増え始めた最大の原因は、世界の景気回復や発展途上国の経済成長によるエネルギー需要の増加である。
地球温暖化防止の国際的枠組「パリ協定」では「世界の温室効果ガス排出量を今世紀後半に実質ゼロにし、産業革命以来の気温上昇を2℃未満に抑える」という野心的な目標を掲げているが、その実現は現状では不可能だとIEAは指摘している。これは多くの関係者にとっても既知の事実だが、それで何が困るのだろうか。
パリ協定の目標は実現できない
地球の平均気温が上昇していることは、いろいろなデータで明らかだ。正確な記録の残っている1890年に比べると今までに約0.8℃、「産業革命」の時期を1800年ごろと考えると、すでに約1.3℃上昇している。これを2℃上昇でピークアウトさせるには、あと0.7℃で止めなければならない。
そのために2050年にCO2の排出量を80%削減する、というのがパリ協定の目標だ。これにもとづいて日本政府は2030年までに(2013年比で)CO2を26%減らすという目標を掲げているが、昨年の日本の温室効果ガス排出量は13億2500万トンと2010年より多い。2011年の震災後に止めた原発が動かないからだ。
パリ協定の目標を達成するため「2030年に原子力比率20~22%」というエネルギー基本計画の目標が掲げられた。これを達成するには25~30基の原発が稼働する必要があるが、「運転開始40年で廃炉にする」というルールに従うと、今後10年以内に10基が廃炉になる。10年後に稼働できるのは15基、電源比で10%がせいぜいだろう。