一律削減より日本にふさわしい役割を

 2℃目標には意味がないのだから、CO2の削減目標にも意味がない。環境問題もエネルギー問題も経済問題なので、費用対効果が大事だ。CO2排出量を抑制する努力は必要だが、日本はすでに世界一の省エネ先進国である。

「省エネでコストが下がる」とか「環境投資で成長できる」などという夢を振りまく運動家がいるが、日本ではそういう低コストの温暖化対策はやり尽くした。残っているのは経済的にマイナスになる対策だけだ。

 再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)でCO2を1%減らすには約1兆円かかる。今でもFITに毎年2兆円以上のコストがかかっているが、政府の削減目標を再エネだけで実現しようとすると20兆円以上かかる。

 こういう社会的コストを内部化するためには、炭素税をかけることも一案だ。日本では財界が反対しているが、アメリカでは炭素1トン当たり40ドルの炭素税が提案され、エクソンやシェルなどの石油資本が賛成している。

 経済的にプラスになる唯一の温暖化対策は、原発を再稼動することだ。古い原子炉を閉鎖することが避けられないなら、新しい原発に更新するしかないが、電力会社は政治的に厄介な原発を新設する気はない。削減目標を実現するには、電力会社の原子力部門を国有化するしかないだろう。

 パリ協定は罰則のない努力目標なので、それを守らないというのも選択肢の1つだ。日本のCO2排出量は世界の3%程度なので、-26%という削減目標が達成できなくても大した影響はない。

 それより世界の排出量の28%を占める中国など、化石燃料を大量に消費する発展途上国の排出量を減らすことが重要だ。経済産業省は、途上国への技術援助や資金援助を削減枠にカウントして取引する二国間クレジットを進めている。

 地球温暖化はグローバルな問題なので、一律に削減するより削減しやすい国でやったほうがいい。福島第一原発事故から7年。そろそろエネルギー問題を「命かカネか」という感情論で語るのはやめ、経済問題として冷静に考えるときである。