上海の国際医療ツーリズムフェアに出展したノヴァ・クリニック。ロシアで代理出産を希望する中国人は多い(写真提供:ノヴァ・クリニック、以下同じ)

 ロシアには意外にも、時々非常にリベラルな制度がある。

 日本では原則認められていない代理出産だが、ロシアでは積極的な議論が交わされ、完璧ではないものの法整備もされている。

 ロシアはますます、かつてのタイやインドの代わりとして、代理出産を望む日本人カップルの注目を集めるだろう。

ロシアの代理出産の定義

 最初に断っておくと、ロシアにおける代理出産とは、依頼者カップルの卵子・精子(またはドナーの卵子・精子)を体外受精させてできた受精卵を、第三者の女性の子宮に入れ、出産してもらう方法のことを指す。

 つまり代理母と産まれてくる子供は、遺伝的なつながりを持たない、というのが原則だ。

 出産する第三者の女性が卵子ドナーになる場合(遺伝上の母になる場合)は、ロシアで言うところの「代理出産」とはならない。

モスクワの不妊治療クリニック

 最近、首都モスクワでは特に、不妊治療に通う人が増えている。筆者は最先端の不妊治療専門クリニックの1つ、「ノヴァ・クリニック」を訪れ、マネジャーのアンナ・カランスカヤさんに話を聞いた。

 このクリニックを訪れる人の主な年齢層は35歳以上。ロシア人が最も多いが、欧州、米国、中国、南米、そして日本を含む世界中から外国人が殺到しているという。

 この病院が外国人に人気なのは、高度な治療が手の届く価格で受けられるためだ。自国では禁止されている代理出産を目当てに来る人も多い。

 アンナさんによれば、代理母になりたい女性もそれなりにいるが、代理出産の需要がハイペースで高まっているので、依頼者の数の方が多いという。