有線七宝錦蛇革財布置「無駄死に、無駄口、無駄遣い」2017年

 ヘビ革のバッグから、当の利用されているヘビの頭が、ぬっと飛び出す。

 ワニ革やヘビ革の財布に鋭い歯が並び、ケタケタと笑うように口を開ける。

 七宝作家・春田幸彦さんは、伝統的な有線七宝という技法によって、見る人をあっと驚かす作品をつくりだす。その作品は、英国ヴィクトリア&アルバート美術館にも所蔵される。

 また新作は、現在、東京・日本橋の三井記念美術館で好評開催中の展覧会「驚異の超絶技巧! - 明治工芸から現代アートへ -」に展示され、話題を集めている。

 人々の意表をつく造形に込めた意味はなにか。本人に話をうかがった。

春田幸彦さん。1969年、静岡県生まれ。1996年、東京藝術大学大学院 美術研究科彫金専攻修了。在学中に七宝の美しさに魅せられ、その道に進む(左の鞄型の作品「反逆」は、撮影時には制作中)

伝統の七宝を立体的に展開しようと思った

──女性用のバッグからヘビの頭が飛び出している作品は、たいへん迫力がありますね。七宝というと、優美な文様が描かれた花瓶やアクセサリーを想像します。そのイメージが大きく覆されました。