「しかみ像」。武田信玄との戦に負けて自陣に逃げ帰ったときの徳川家康を題材にした

 近年、日本の工芸作品に見られる「超絶技巧」への関心が高まっている。

 明治時代の美術品に注目が集まりがちだが、現代の作家にも超絶的な技巧を駆使して、作品をつくり上げている人たちがいる。明治時代と変わらぬ技法で木彫作品をつくる、仏師の加藤巍山(かとう・ぎざん)さんも、その1人だ。

 仏像を制作するときは敬虔な信仰心を形にし、日本の古典や歴史を題材にした創作作品では優れた造形感覚を発揮。単に伝統を守るだけでなく、一作家として「現代アート」の世界を果敢に切り開いている。

 加藤さんの工房を訪ね、「木」という素材への思いをうかがった。

加藤さんの作品『恋塚』(2016年)。源平時代の逸話を作品にする。古典に材をとりながら、人物造形はきわめて現代的だ

高村光雲の5代目の弟子

──どのようなきっかけで、仏師になられたのでしょう。