ハロウィンで賑わう渋谷駅前の様子(2016年撮影)。 Photo by Dick Thomas Johnson, under CC BY 2.0.

 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行っています。

 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。

バルス祭り、ハロウィンに見る「モノからコト」の次

「『モノ消費からコト消費へ』・・・って、なんだかずーっと言われ続けていますよね」。

 社内で若手と会話した時、ふとそんな言葉が出てきました。

「モノからコト」。生活者の消費トレンドを表したキーワードは数あれど、この言葉ほど多く語られ、浸透している言葉もなかなかないでしょう。ある商品・サービスのヒットの要因を語るとき、「(生活者の)コト消費マインドを捉えた」「モノよりもコトを求めるお客様のニーズに対応した」「体験型消費に重点を置いた」などなど・・・、言い回しは多少変わりつつも、これまでいろいろなところで「モノ消費からコト消費へ」は登場してきました。

 モノが暮らしを充実させ、所有することが豊かさに直結したとされる「モノ消費全盛」の1970-80年代。そして、モノが一通り生活者に行き渡り、新しい・珍しい「体験」に心の充足を求めだしたとされるのが1980年代以降。

 象徴的なデータが、内閣府「国民生活に関する世論調査」。「物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい」と答えた人の割合が「まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」と答えた人の割合をこの頃逆転。以降1990~2000年代にかけ、その差を広げています。