(文:堀内 勉)
「女性が輝く社会」のウソとホント
作者:アン=マリー・スローター 翻訳:関 美和
出版社:エヌティティ出版
発売日:2017-07-31
『仕事と家庭は両立できない?-「女性が輝く社会」のウソとホント』(原題:Unfinished Business: Women Men Work Family)の元になった、The Atlantic誌2012年7-8月号の論考『女性は仕事と家庭を両立できない!?』(原題:Why Women Still Can't Have It All)の中で、アン=マリー・スローター教授が訴えた現代社会の「不都合な現実」は、フェミニズム先進国のアメリカ社会で大論争を巻き起こした。
フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOが、働く女性の意識改革を訴えて全米大ベストセラーとなった『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』(原題:"Lean In: Women, Work, and the Will to Lead")の出版からまだ数か月という時期に、元国務省高官で現プリンストン大学教授にして2人の息子の母であり、同僚の大学教授の良き妻であり、全ての働く女性にとっての模範的存在であるスーパーウーマンが、「キャリアも子育てもなんて、やっぱり無理!」と告白したからだ。
米国の外交関係者にとって国務省政策企画局長のポストといえば、米国の冷戦政策を計画した外交官で歴史家のジョージ・ケナンが初代を務めたことでも知られる夢の仕事であり、スローター教授は、その職に女性として初めて就任した。その彼女が、「政府の要職を担いながら、10代の2人の息子を育てるのは無理」と判断して、わずか2年足らずでプリンストン大学に戻ってしまったのだ。