1月27~28日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)では、国債購入について声明文の表現が半歩前進したほか、リッチモンド連銀ラッカー総裁がマネタリーベース増加を望ましいと考える視点から長期国債購入の即時実施を主張して反対票を投じたことが明らかになった。だが、購入時期の明示など、より踏み込んだ内容を事前に期待していた債券市場はいったん失望することになり、28日の米長期金利は上昇した。

 一方、米国株は「バッドバンク」設立が近いとする報道を好感して大幅高となり、ニューヨークダウ工業株30 種平均は前日比200ドルの大幅上昇となった。

 市場の期待値が高すぎたことが米長期金利上昇を招いたと言えるが、冷静に見ると、今回のFOMC声明文が示した景気・物価認識は下記のように、昨年12月FOMC時点と比べて、一段と厳しいものになっている。

 特に、声明文が「インフレ率がしばらくの間、経済成長と長期的な物価安定を最も支援する水準を下回り続けるリスクがいくらかあることを、FOMCは認識している」と明記することで、インフレ率が暗黙の目標圏を下回り続けるリスク、分かりやすく言えばデフレのリスクをこれまで以上に強く前面に出してきたことは、非常に重要である。

 ハト派のサンフランシスコ連銀イエレン総裁のように、1%を下回るインフレ率は受け入れられない、と明言しているFOMC投票権メンバーもいる。

 また、住宅ローン金利が反転上昇している中で、23日までの週の住宅ローン申請指数が借り換えを中心に急低下するなど、「信用緩和」による景気刺激効果は、いま一つ目立った成果を挙げられていない。

【景気認識】~ 一段と悪化しており、年内回復見通しもダウンサイドリスク大

(昨年12月15、16日FOMC声明文)
Since the Committee's last meeting, labor market conditions have deteriorated, and the available data indicate that consumer spending, business investment, and industrial production have declined. Financial markets remain quite strained and credit conditions tight. Overall, the outlook for economic activity has weakened further.
(前回のFOMC会合以降、労働市場の状況は悪化した。入手されるデータは、消費支出、設備投資、鉱工業生産の悪化を示している。引き続き、金融市場はきわめて緊張した状態で、信用状況はタイトである。総じて、経済活動の見通しは一段と悪化した)

↓(今回声明文)
Information received since the Committee met in December suggests that the economy has weakened further. Industrial production, housing starts, and employment have continued to decline steeply, as consumers and businesses have cut back spending. Furthermore, global demand appears to be slowing significantly. Conditions in some financial markets have improved, in part reflecting government efforts to provide liquidity and strengthen financial institutions; nevertheless, credit conditions for households and firms remain extremely tight. The Committee anticipates that a gradual recovery in economic activity will begin later this year, but the downside risks to that outlook are significant.
(12月の会合以降に入手された情報は、経済が一段と悪化したことを示唆している。消費者と企業が支出を削減する中で、鉱工業生産、住宅着工、雇用は鋭角的に減少を続けた。加えて、世界の需要は顕著に減速しつつあるようである。いくつかの金融市場の状況は、部分的には流動性を供給するとともに金融機関を強化しようとする政府の努力を反映して、改善した。しかしながら、家計や企業に対する信用状況は極端にタイトなままである。今年遅くには緩やかな景気回復が始まるものとFOMCは予想しているが、そうした見通しに対するダウンサイドリスクは大きい)