「近代化」にとって不可欠な現地人エリートを組織的に育成したことも、英国の「遺産」と言える。これが独立後のインドとパキスタンが自立するための大きな財産となったことは間違いない。

 だが、なんといっても大英帝国の大きな「遺産」は英語だと言うべきだろう。

 多民族と多宗教が混在するインドは同時に多言語地帯であり、共通語としての英語は少なくとも中流階級以上には普及している。英語のおかげで、教育水準が高いインド人が、旧宗主国の英国だけでなく、米国でも大いに活躍することが可能になっている。インド人技術者がいなければ、米国のハイテク産業が成り立たないほどである。

インドが舞台になる日英米の新時代

 インドは亜大陸(大陸の中で地理的に独立した地域)であり、これまではどうしても「大陸国家」的性格が強かった。だが、そんなインドが再び「海洋国家」として目覚めてきたのは、日本にとってはありがたいことだ。

 海洋国家としての日本が生き残る世界は、太平洋の東南アジアからオーストラリアとニュージーランドを含めたオセアニア、そしてインド洋にかけての海域となる。これはかつての大英帝国の勢力圏であり、現在でも「アングロスフィア」(英語圏諸国)と呼ばれている。

 日本が生き残る世界と、「EU離脱」後の英国が生き残る世界が、インドを中心とした「英連邦」という勢力圏で重なることになるわけだ。先の大戦では激しく戦った日本と英国だが、インドとインド洋が政治的にも経済的にも密接な関係を構築する「場」となるのではないだろうか。

 もちろん、そのなかには米国も含まれる。インドは、古代以来の独自の文明をもつ「文明国」だが、現在ではアングロサクソン世界との関係が深い。米国は言うまでもなくアングロサクソンが打ち立てた国である。

「インド独立70年」を祝して、そんなことを考えてみた。