「日本は金融立国を目指すべき」「東京をニューヨークやロンドンと並ぶ金融センターに」という議論が行われるようになって久しい。様々な報告書、提言も飛び交っている。
しかし、いまだにその「目標」が達成できたとは言い難い。それどころか、同じアジアのシンガポールはとっくに先を行ってしまっている。日本がシンガポールを追い抜く時が来るのだろうか。来るのであれば、日本の何が変わった時だろうか。
シンガポールはいまや世界有数の金融センターの地位を確立している。世界経済フォーラムが、毎年、公表している「国際競争力指数」(GCI:Global Competitiveness Index)に基づいたランキングでは、シンガポールは2011年以来、2位を保っている。日本はというと、同期間中は9位、10位、9位、6位、6位、8位である。この指数を構成する要素は計12項目あるが、そのうち「金融市場の成熟度」について見ると、シンガポールは2位であるのに対し、日本は17位(いずれも2016年)と大きく差が広がっている。
シンガポールの人口は日本の20分の1以下、国土は東京23区程度、GDPは10分の1以下である。そんなシンガポールの金融市場の成熟度が、なぜ日本のはるか先を行っているのだろうか。
日本の金融市場の現状
まず、日本の現状を確かめておきたい。2017年4月にマッキンゼーが公表した "Deepening Capital Markets in Emerging Economies" の中で、"McKinsey Asian Capital Markets Development Index" という指標を用いて、日本を含む各国の金融市場を分析した。
図1は、資本市場の機能を3つのパラメータ(資本調達規模、投資機会、プライシングの効率性)で総合評価した結果だ。いわば、資本市場の成熟度合いを示す指標で、日本はアジア内でシンガポール、韓国、豪州をもしのいで第1位である。
出所: マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社 金融グループ「日本の金融立国構想に向けて」(2017年6月)
拡大画像表示
(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50595)