2017年3月、新宿高島屋8階のファッションフロアにオープンしたベネクス直営店(写真提供:ベネクス、以下同)

 スポーツ健康関連の世界的大企業が続々と参入し始めた製品市場がある。疲労やストレスによる不眠・不調、血行障害による様々な故障に劇的な改善効果をもたらしてくれる「リカバリー(ウェア)市場」である。

 多くの人々を長年悩ませてきた難題を解決する製品市場だけに、世界の注目度は高く、今後急速に拡大していくことが見込まれる。

 そして、この分野を世界で初めて創出し、学術的裏付けをもって、抜きん出た成果を挙げているのが、中村太一氏(37)率いる「ベネクス」である。資本金1000万円、従業員18人、年商7億2000万円。本社は神奈川県厚木市。

世界で初めてリカバリーウェアを開発して以来、右肩上がりの成長を遂げるベネクス

 中村氏が中心となって開発したリカバリーウェアは、休息・睡眠時に着用することで、身体を交感神経優位から副交感神経優位へとシフトさせ、疲労回復を実現する。それを可能にする独自技術が「PHT」(=Platinum Harmonized Technology、2008年特許取得)である。ウェアの繊維に織り込まれた、微細なコロイド状(4nm)に特殊加工したナノレベルのプラチナが身体に作用し、副交感神経優位へと導くという。

 ベンチャー企業ながら今や世界を牽引するベネクスだが、ここに至る道のりは決して平坦ではなかった。

(前編)「脱常識で切り開いたリカバリーウェアという新市場