前FBI長官、米政権の「うそ」糾弾 公聴会で爆弾証言

米上院情報委員会公聴会で証言するジェームズ・コミー前FBI長官(2017年6月8日撮影)〔AFPBB News

 米国トランプ政権は発足半年を経ずしてすでに末期的な症状を示しています。

 「ロシア・ゲート疑惑」に関連して不自然に任を解かれたジェームズ・コミー前FBI長官が6月8日、上院情報特別委員会の公聴会で証言、米国は国を挙げてこの「お祭り騒ぎ」を観戦する事態となったようです。

 朝10時からの証言だというのに、スポーツパブは公聴会見物の客でごった返し、日も高いのにワインやビールで盛り上がる人があふれた様子。これはアメリカン・フットボールや野球の大きな試合の際、普通に見られる風景ですから、それ自体は別段驚くほどのことでもないでしょう。

 コミー前長官は席上、ロシアがトランプ氏が選出された大統領選を妨害し、かつ民主党全国委員会を攻撃し情報を漏洩させたのは「疑う余地がない No (doubt) 」(ビデオで確認できます、23分近辺からの質疑応答参照)と明言しました。

 またトランプ氏自身が捜査対象でないことを公表するよう、圧力をかけられたが、状況の変化を念頭に一切公表しなかったことも証言しました。

 トランプ氏から大統領に忠誠を誓うよう圧力を受けた際には、FBIの独立性に鑑みて不安に感じ、後でトランプ大統領が嘘をつくことを懸念し、会話内容を異例の詳細なメモに残したと証言しています。

 また、マイケル・フリン前大統領補佐官について「彼はいいやつだ。捜査から手を引くことを望む」というトランプ大統領の発言は「捜査中止命令ではないが、大統領としての指示として受け止めた」などと赤裸々に証言しています。

 こんな動画がリアルタイムで流れてくるのですから、米国人がどういう反応をするかは自明でしょう。

 トランプ大統領がツイッターで何かコメントするたびにビールを無料で振舞う店も出現、ほとんど「気分はスーパーボウル」という状況になってしまった。ヤンキーらしいメンタリティと言えばそれまでの話かもしれません。

 しかし、20代前半のボンボンがいきなり親の会社の経営陣に加わり、50代後半からはテレビのバラエティ番組で知名度を売った。そして70歳で生まれて初めて公職に就く・・・。

 日本でも見られる最悪ケースの雛形を地で行くようなキャリアですが、この「老ドナルド」が、人払いをしたサシの場でなら何を言っても、何をやっても、記録さえ残っていなければ何でもいい、と思い込んでいるらしい風情の疑惑の数々は、とてもではないですが、米国の厳しい法規制の網を潜り抜けられるとは思えません。

 幸か不幸か「問題ない」などと誰かがのたまい、正体不明の「閣議決定」もとい「霍偽決定」の連発でどうにかごまかせると思い込むようなおめでたい人物のいない米国では、法務を執行するトップ、つまりFBI長官を直々に呼び出して、自分のスタッフであるフリン元陸軍中将(一瞬だけ大統領補佐官)への捜査をやめるようコミーFBI長官に圧力をかけるなど前代未聞の出来事でした。

 当然、そんなことで怯むわけがないプロフェッショナルのコミー氏を動かすことはできませんでした。