羽田 私は2005年6月に入社したのですが、私が入る数カ月前に全社員で話し合って経営理念が決まり、カードもできていました。

──それが今もずっと変わらないのですね。

羽田 ガイドラインは数年に1回、事業のフェーズに合わせて差し替えていますが、社是と経営理念は変えません。

──社員はみんな経営理念を暗唱できるのですか。

羽田 みんなできると思います。経営理念の意味は、確実にみんな理解しています。

 浸透施策の1つとして、ちょうど今日も経営理念やガイドライン、会社の事業戦略等の理解度を図る年に1回の「LIFULLテスト」を行ったところです。また、年に2回、ビジョンがどの程度自分に落とし込めているかを調査するアンケートも行い、社員への浸透度をチェックしています。そこで確認し、浸透度が低い部門には、上司が入って対策を練るということも行っています。

経営理念に共感してくれる人だけ採用する

──経営理念を浸透させるための施策を打っても、社員がそれまでに培った価値観を変えるのは大変ではないですか。あらゆる場面で会社の価値観に沿った行動を躊躇なく取れるようになるのは、なかなか難しいのでは?

羽田 そうですね、なので、当社は採用を非常に重視しています。目指すものが同じで、基本的な価値観が似ている人を採用するようにしています。

 実は、ある時期から採用方針を「経営理念と企業文化に徹底的に共感してくれる人材だけを採用する」方向へ大きく変えました。どれほど即戦力としてのスキルが高くても、ビジョンやカルチャーにずれを感じたら採用しません。

 私が入社した2005年頃は、経営理念に共感するというよりも、「不動産業界を変革したい」という井上(社長)の想いに惹かれて入社する社員が多かったように思います。また、2006年に東証マザーズに上場した頃と前後して大量採用するようになったら、価値観の合わない社員がだんだん増えていきました。すると、ビジョンやカルチャーを改めて共有するための時間をさかなければならないので、生産性が低下してしまったんです。