あなたが自閉症に対して抱いているイメージは大きく間違っているかもしれない(写真はイメージ)

 僕らが「当たり前だ」と思っている事柄は、どのようにして僕らの頭の中にやってきたのだろうか?

 大昔には、カメやゾウの上に世界が乗っている、と考えた人がいた。現代人である僕らは、その発想を笑うだろう。そんなこと、ありえないと。だったら、僕らにも同じことが言えるはずではないだろうか。例えば1000年先の未来人が、今の僕らが考えていることを「ありえない」と笑っている姿を、僕は容易に想像することができる。

 常識というのは、「その時」「その場所」でしか成立しない。僕はそう考えている。「その時」や「その場所」をどれぐらいの幅で捉えるかは状況次第だが、今僕らが常識だと思っている事柄は、「その時」や「その場所」から外れてしまえばもう常識ではなくなってしまう。しかし僕らは、常識というのはいつどんな場所でも成り立つと考えてしまいがちだ。

 そういう発想から抜け出し、常識に囚われずに物事を見る視点を獲得できるだろう3冊を紹介しようと思う。

自閉症を“内側”から観察して言葉で表現

自閉症の僕が「ありがとう」を言えるまで』(イド・ケダー著、入江 真佐子翻訳、飛鳥新社)

「自閉症」という障害に、どんなイメージを持っているだろうか?自閉症と言ってもその発現の仕方は様々だが、特に重度の自閉症患者は、知能が足りず、意味の分からない行動をする者に見える。

 僕は、自閉症について深く考えるような機会がなかった(つまり、人生で自閉症患者とはっきり分かっている人と出会うことがなかった)が、漠然としたイメージで言えばやはり、知的障害がある人たちなのだと思っていたはずだ。知的障害があるからこそ、僕らの言葉も理解できないし、手をぶらぶらさせたり奇声を発したりというような行動を取ってしまうのだろう、と。

 そんなイメージを鮮やかに覆してくれたのが、本書『自閉症の僕が「ありがとう」を言えるまで』(飛鳥新社)の著者であるイド・ケダーだ。