「週刊文春」編集長はスクープを連発し続ける組織をどう率いているのか?(写真はイメージ)

 筆者が勤める書店「さわや書店」(岩手県盛岡市)の新規店をオープンすることになった。

 書店を新しくオープンする際には、やるべきことが思った以上にたくさんある。大家である商業ビルとの打ち合わせ、卸業者とのやり取り、スタッフの募集と面接など、細かいところだとレジの設定や、各出版社にリリースする情報の作成なんかもあったりする。だから通常は一番大切な「選書」、いわゆるどんな本を店に置くのか選ぶ作業を卸業者にすべて任せるという書店も多い。うちの書店では、そういった手抜きを何よりも嫌っているので、開店に向けた選書作業には力を入れた。オープンの日にきちんとした品揃えで、お客さんを迎えるべきとのこだわりである。

 新規店は170坪ほどに、イベントスペースやCD売り場、パソコン教室の併設など、当社にとっては新しい試みを取り入れた店舗で、本それ自体の冊数は抑えめである。それでも選書作業は正直いってしんどい。各ジャンルの「鍵になる本」を選ぶことはもちろんだが、見せ方の工夫に加えてこだわりの1冊をどのように組み込むかといったことまで考える。そちらに神経を使いながら、今回の開店準備で予想以上に難儀したのは、店舗の設計や什器の選定だった。

 設計会社にどういった店にしたいかを伝え、後日提示された数種類のパターンを吟味しながら、それにいろいろとアイディアを付け加えてゆく。採用されるもの、されないものを含めて打ち合わせは数えきれないほどの回数にのぼった。デザインのプロである設計会社と素人である我々の希望が、かみ合わないまま平行線の議論となることもしばしばだった。

 そんななか痛感したのは、自らの「配色」と「デザイン」のセンスのなさである。これでも中学校のときの美術の成績は、5段階評価の「5」だった記憶があるのだが、あくまでも相対評価ということだったのだろう。ああでもないこうでもないと悩んでいると、出版社の営業担当者に薦められていた本の存在に思い至った。