欧州とは違う日本の“同一労働同一賃金”
2017年3月、政府から働き方改革の実行計画が発表された。その筆頭に掲げられているのが「同一労働同一賃金の実現」である。
同一労働同一賃金の実現に向けて、政府は既に、同一企業の正社員と非正社員の間にある、基本給や賞与、手当、福利厚生などの待遇差に関するルールと、待遇差が問題となる例、問題とならない例を示したガイドライン案を発表している*。
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一般に、同一労働同一賃金と聞いてイメージするのは、欧州でみられる「職種ごとに賃金水準が明らかで、同一の職務であれば、他の企業に移っても、同じ賃金が得られる」というものだろう。ところが、ガイドライン案は、同一企業内の雇用形態による待遇差の是正を目指したもので、他の企業に移れば、同じ仕事でも賃金水準が変わることが十分ありえる。
このように、日本で進めようとしている“同一労働同一賃金”は、欧州の企業横断的なそれとは、まったく異なっている。
*:同一労働同一賃金のガイドライン案は、今後、法改正に関する審議会や国会審議を踏まえて、最終的に決定されるものであり、現時点で法的効力はない。
同一労働同一賃金の真の狙い
そもそも、同一労働同一賃金にここまでハイライトが当たったのはなぜだろうか。2016年6月、政府が閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」に、その背景をみることができる。