ジュリアン・アサーンジ(Julian Assange)は時代が生むべくして生んだアンチヒーローだ。半年ほど前ニューヨーカー誌が載せた長文の紹介記事によると、ウィキリークス創始者の39歳は、住所不定にして学歴はゼロ。
18歳の時、16歳の少女を身ごもらせる
18歳の時、16歳の少女を身ごもらせた。生まれた赤子を巡って熾烈な親権奪取闘争を繰り広げた経験が、後にウィキリークスを始めた際の素地になったという。
何々主義者とあえて呼ぶなら、インターネット時代の過激無政府主義者だろうか。
パーマネント・トラベラーだから、恐らく税金は納めたことがない。定住経験自体がないことにしろ、学歴はおろか学校に通ったことすらない点にしろ、規格外の母親に育てられた影響が大きい。
そんな描写を含むNew Yorker誌2010年6月7日付の密着リポートは、全くもって読みでがある。米国外交公電一括暴露という前代未聞の事態を受け、記事は多くの読者を集めているのではないか。
アサーンジ(Assange)という姓は家系に流れる中国人の系譜を示唆するものらしい。司馬遼太郎が題材にしたことのある豪州木曜島に渡った中国人から、彼の系統は発する。生まれと育ちはオーストラリアだ。
学校の代わりに図書館通い、カフカを好む
母親はジュリアン・アサーンジが1歳になるかならぬうち、巡業芝居の座長と再婚した。旅から旅の毎日、おまけにその母が「公教育システムに入れたら、権威権力順応型の人間になる」と固く信じるアナキストで、ジュリアンを学校へ通わせなかった。
母親からの教育に加え、一定年齢に達してからは図書館に通って読書に精を出したのだとか。カフカを好むそうだ。
コンピューターに関する知識ももちろん独学だけれど、インターネット未生以前、まだパソコン通信の時代既にハッカーとして異才を開花させ、豪州警察当局に挙げられたことがある。
BBCの取材に応じた様を見ると、長身だというその背丈までは分からないが金髪というより銀髪(少女との間に起こした親権争奪戦に疲労困憊したせいだとNew Yorker誌)を額に垂らし、どこの国、地方か定かならざるアクセントで英語を操るところ、一部にカルト的崇拝者を生むのはさだめしと思わせる。