赤身、白身、イカ、貝~ネタの食感にはワケがある

歯ごたえで味わう握りずしの魅力

2017.04.07(Fri)佐藤 成美

「赤身の魚は厚く、白身の魚は薄く切ります。これも筋肉の組織構造の違いからなのです」と小川氏は説明する。マグロなど赤身の魚は、筋原線維タンパク質が多く、やわらかい。一方、ヒラメなど白身の魚は筋原線維を包む筋膜が厚く、コラーゲンなどが多いため硬い。そこで、マグロは厚く切って、ねっとりしたうまみを味わう。薄く切れば、歯ごたえがなくておいしさは感じられないだろう。一方、ヒラメなどでは薄く切って食べやすくし、その食感を楽しむのだ。

 イカの独特の食感は、他の魚介類と異なり、複雑に繊維が重なった筋肉構造から生まれる。スルメイカなどのイカの胴体は、4層に重なる薄くて硬い表皮、体軸に対して横方向の繊維が走る筋肉、縦方向に繊維が向いた内皮からなる。下処理で皮剥きをするが、剥けるは表皮の2層目までで、3層目は網目状、4層目は体軸に対して縦方向に繊維が向いている。4層目は硬いコラーゲンからなり、筋肉と強くくっついているので、表面に切り目を入れたり、斜めにそぐように切ったりして食べやすくしている。

貝類で歯ごたえを楽しむ

 何より歯ごたえが楽しめるのは貝類だ。貝類は、歯ごたえのある食感、また噛みしめたときの甘味や磯の香りが魅力である。

 日本人は古くからアワビやイガイなどの貝類をすしの材料として味わってきた。すしネタにされる貝の種類は多く、他にもアカガイ、トリガイ、アオヤギ、ホタテガイなどがよく使われている。一般的に貝類は生で使われるが、貝類はコラーゲンが多く硬いので、食材によって煮たり、蒸したりと調理して使われる。

アワビの握りずし。

 生のアワビはコリコリとした食感が特徴的だ。「“コリコリ”はコラーゲンが多いことにあります。筋原線維や筋膜は短いほうが食べやすくなるのですが、筋原線維の方向に対してわざと斜めに貝を切ります。すると、筋原線維の短い部分と長い部分ができて食感に変化が出るのです。職人によっては、わざと表面をギザギザに切って、醤油が付きすぎないようにして貝のおいしさを味わってもらうなど工夫しています」と小川氏は話す。

 オレンジ色の「アカガイ」は、独特の甘みや苦味が魅力で、ぷりっとした食感を楽しめる。アカガイに切り込みを入れてあるのは、コラーゲンや繊維を切って食べやすくするためだ。さらに、包丁の平たいところで貝を叩くと、切れ目が反り返る。目でも楽しめる逸品だ。

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