日本の通貨当局はいつ円売り介入に動くのだろうか。あるいは、本当に円売り介入に動くことができるのだろうか。クロス円を中心にじわじわと円高圧力が強まる中で、市場が強い関心を抱いているテーマの1つである。23日には、介入の実務を担当する日銀がレートチェックを行っているのではないかという観測が、市場で流れる場面もあった。
日本経団連の御手洗会長は1月13日の記者会見で、「円高というより円独歩高になっている。日本経済にとってよくない。(円高が)長く続くようなら各国に呼びかけて為替介入をしてもらいたい」と発言し、政府に対して円高是正策を講じるよう要望した(1月14日付 日刊工業新聞)。
米国の過剰消費が崩壊して世界的に需要のレベル感が一段切り下がる様相を呈する中で、日本の企業は、輸出数量の落ち込みに加えて円高による輸出価格(採算)の悪化という、ダブルパンチに見舞われている。せめて円高だけでも止まってくれれば、と企業側が考える気持ちはよくわかる。
だが、為替相場というのは「相手のある話」であり、為替介入もまた同じ。ドル/円であれば米財務省から介入実施について事前に了解を得る必要があると考えられる。
また、外国為替資金特別会計(外為特会)が抱えている含み損の大きさなども問題になってくる。日本の通貨当局が円売り介入に動く上でクリアする必要があると考えられる「ハードル」3つについて、以下で簡単に説明してみよう。
(1)「米オバマ政権は円売りドル買い介入を容認するか?」
G7は昨年10月27日、過度の円高を牽制する共同声明を発表。そこには、「我々は、最近の為替市場における円の過度の変動並びにそれが経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを懸念している」と明記されており、日本の通貨当局は円売り介入実施についてG7からお墨付きを得たものと、市場は受け止めていた。
しかしその後、米国で政権が交代。オバマ政権の財務長官に指名されているガイトナー氏は22日、上院財政委員会にあてた書簡の中で、中国が人民元相場を「操作」しているとして同国の為替政策を強く批判し、市場に驚きをもたらした。
中国人民銀行の為替介入を批判するのならば日本の介入も米国は容認しにくいのではないか、という思惑につながったためである。また、そもそも日本時間1月26日時点で、ガイトナー氏の財務長官就任を承認する採決は米上院本会議で行われておらず、米国側に通貨政策の事実上のトップが不在だという事情もある(日本時間27日朝にはそうした状態は解消する見込み)。
さらに言えば、オバマ政権がまだ発足したばかりであるため、為替政策でも基本方針を固めるのにある程度時間がかかることになろうし、それまでの間、日本の財務省としては、よほどの緊急事態でない限り現実問題として介入には動きにくいのではないかと考えることもできよう。
いずれにせよ、米国さらにはG7全体の為替相場についての見解を再確認する上での次の大きな節目は、2月13~14日にローマで開催される予定の次回G7会合になる。