石原慎太郎元知事は3月20日の都議会百条委員会での証人喚問を控えている。しかし、氏は「座して死を待つつもりはない」として、自らの所信を3月3日に記者会見で表明した。
家から出てくる氏に記者が「どんな心境ですか」と問うと、「果し合いに出かける昔の侍の気持ち」と語った。
心意気を壮としたいが、氏がこの期に及んで百条委員会に呼ばれる理由を勘違いしていたのか、肝心な点では「記憶にない」や「みんなの責任」など、すっきりしない幕切れとなった。
問題は豊洲市場への移転の遅れの遠因である汚染処理を含む契約と汚染の現状、さらには基本計画と都民への説明の食い違いなど、どこまでも石原都政時代の移転決断上の不明点の解明と責任の所在である。
石原さんらしくない記者会見
石原氏は都民が選挙で選んだ都政の最高責任者であったが、部下たちは部局や専門事項についての司ではあってもあくまでも知事が選び、あるいは承認した官僚でしかない。
大部は部下に任せていたとしても、重要事項(大きな予算事案など)の要所では関心をもって途中経過などについて問い質し、あるいは報告させるなど、最高責任者として関心を払うのが当然であったろう。
こうした視点からは、都行政のトップにありながら無責任さだけを浮き彫りにした記者会見の様相を呈した。
翌日の新聞社説は「石原氏は責任を回避するな」(読売)、「結局は責任逃れなのか」(毎日)、「責任逃れではないか」(東京)と、「責任」を書き立てた。
中でも読売新聞は「部下や専門家にすべてを任せ、追認するだけだったという。都政の最高責任を担っていたとは思えない」と書き、東京新聞は「リーダーとしての責任の重みをわきまえないまま十三年余にわたり、首都の代表を務めていたのか。(中略)凍結状態に陥った大事業を前に何らの痛痒も感じないのか」と厳しく追及した。
社説以外では「石原氏 居直り1時間」「専門家が決めた」 (朝日)、「石原氏 苦しい釈明」「売買交渉 一任」(読売)、「行政全体の責任」「東ガスとの交渉『知らぬ』」(毎日)、「私一人の責任ではない」「部下信頼してはんこ」(東京)、「責任転嫁に終始」「側近に用地交渉一任」(産経)、「すべて任せていた」「築地の人が生殺しだ」(日経)など、スポーツ紙に劣らずとは言わないが大活字が並んだ。
石原氏の体調を考慮してか、記者の質問は全般に穏やかなものが多く、気持ちをいらだたせるような質問は以下(要旨)のようにわずかでしかなかった。