太陽光発電施設の建設による環境破壊が各地で問題になっている。
地方に住んでおられる読者なら、山や台地の斜面が丸裸にされ、大量のソーラーパネルが並んでいる光景を見て土砂崩れの心配をしたことがある人も多いだろう 。あの光景を一目見れば、「二酸化炭素を出さないから環境にいい」などと言った宣伝がウソに思えてくる。
とはいえ、知恵と工夫によって環境に悪影響を及ぼすことなく設置することは可能だ。一般的になじみがあるのは、多くの家の屋根に設置する方法だ。農業界隈では、田畑の上に設置する方法が考えられ、実際に試みられていることは2014年の記事で述べた。
「太陽光発電と農業のハイブリッド、成功のカギは「支柱」の開発」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39851)
それから約3年、田畑にソーラーパネルを設置して、太陽光を作物と発電でシェアする「ソーラーシェアリング」をやっている農家がいると聞き、訪ねてみた(2016年9月取材)。
若者が農業に希望を持てるモデルを
場所は兵庫県宝塚市西谷、県道68号(北摂里山街道)沿いの農家。取材時この周辺には、ほかにも3カ所、ソーラーパネルを設置している農地があったが、この12月に新たに1つ設置された。2017年には、さらにもう1つ設置されるようだ。
いずれも設置業者は同じで、現在2名の有志が宝塚市西谷ソーラーシェアリング協会を結成し、ソーラーシェアリングの普及を図っている。今回は同協会のメンバーの1人である西田均氏に話を聞いた。
西田氏は68歳。県立有馬高校農業科を卒業し2年間自衛隊に入隊した後、家業だった大工をやりながら農業を続けてこられたとのこと。
自前の農地は9反歩(90a)ほどだが、集落営農のリーダー格で代表を務める農事実行組合(任意組合の形態の1つで主に農家によって構成されているが法人格を有しない組合)では、17町歩(17ha)を管理されている。
組合では、田植え機に取り付けるマット状の苗1万3000枚の栽培および販売もされていて、これは宝塚市で生産されているコメの65%に相当する、86ha分くらいの規模だ。
そんな西田氏が、太陽光パネルの設置の検討を始めたのは、やはり地元農業の振興を考えてのことだ。西谷という地域は宝塚市北部の山間部で、宝塚歌劇のある市街まで行くのに車で25分、バスで40分ほどかかる地域。そのバスも便数がすくなく、交通面ではかなり不便なところだと言えるだろう。
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そんな地域では、若者は地域から流出することが多くなるわけだが、若者の流出を止められないにしても、西谷で若者が農業をすることに希望が持てる手本となるようなモデルを作らなければいけないだろうと西田氏は考えた。実際、そんな野心がなければ60歳を大幅に過ぎて投資回収に時間のかかるソーラー発電に興味を示したりはしないだろう。
作物にも人にも優しいメリット
同様の考えを持つ友人とともにソーラーシステムを導入し、ソーラーシェアリング協会を立ち上げたのは2015年12月のこと。地域を「ソーラーの里 西谷」として有名にして、多くの人が訪れ、ソーラーパネルの下で作られた作物がブランド化されるのが目標だという。