(文:仲野 徹)
はばかりと呼ばれることがあるほどに、口にすることが憚られがちなトイレである。毎日必ずお世話になるにもかかわらず失礼なことだ。『トイレ 排泄の空間から見る日本の文化と歴史』はそのトイレを巡っての、うんこ話じゃなくてうんちく話が、うんこ盛りじゃなくててんこ盛りの一冊だ。
編著者は『屎尿・下水研究会』である。会員は20名ほどだが、その職種が便器の設計者や紙の研究家、屎尿処理行政担当者など多岐にわたっているだけあって、ほんとに様々な話題がちりばめられている。
なぜ「ちょっと高野山へ」なのか?
出版社:ミネルヴァ書房
発売日:2016-10-22
意外にも、世界最古のトイレは水洗だった。メソポタミア文明のエシュヌンナ遺跡から見つかった紀元前2200年ころのものである。日本でも、縄文時代の遺跡から桟橋式のトイレが発掘されている。まさに「かわや」だ。どちらも水洗とはいえ、基本的には川に流してるだけですけど、まぁ、道糞してほっとくよりは、うんこまし、じゃなくて、うんとましですわな。
近代的な意味での水洗トイレは、エリザベス女王のため1597年に作られたものであります。なんでも、エリザベス女王は屎尿のにおいが大嫌いで、自分のものにも耐えられなかったそうであります。さすがです。ちなみにそれ以前は椅子式の「おまる」でありました。また、そのころのロンドンでは、家庭からの屎尿は川に投棄されていたので、細い川などは屎尿や汚物で堰き止められるようなこともあったとか。イギリス、いろいろとすごすぎます。