12月のウラジーミル・プーチン大統領来日を前に、日露経済協力案件がいろいろと出てきている。案件リストを見ると、常連のシベリア開発から医療まで、思いつく限りのメニューが日露双方から出ている。
ぜひ実現してほしいのだが、一抹の心配もある。それは両国における案件の担い手に対する不安である。
日本人の経済協力への無関心についてはさておき、露側の事業を担うロシア人への不安が、筆者の中で拡大しつつあるので、最近モスクワ大学で講義した際に感じたことを含めてご報告したい。
9月中旬のある日、モスクワ大学ビジネススクールで40人ほどの学生を相手に最近の日本のビジネスについて話をした。
午前中、2年生対象に1回、午後は4年生対象に1回と、90分の講義を2本だから、それなりに時間はたっぷりあって、素人講師としては満足できるセッションだった。
極東に関心示さないロシアの学生
ビジネススクールのS教授の授業を、こんな形でお手伝いするようになって、3年になる。彼の担当科目は「World Business」で、筆者が客員として講義をお引き受けしている青山学院大学での「国際ビジネスと海外事情-ロシア編」をちょうど180度裏返しにしたような授業である。
授業内容については、S教授のアドバイスもあって、テーマはそれほど厳密には決めず、学生の関心が強い旬の話題から入ることにしている。
日本との関係を特に取り上げるわけではないが、プーチン大統領の動きであれば、旬の話題と言えるだろうと、今回は9月にウラジオストクでの経済フォーラムに合わせて行われたプーチン大統領・安倍晋三首相会談から話をスタートさせた。
しかし、学生の表情に変化が見えず、明らかに話に興味を示していない。そこで、こちらからこんな質問をしてみた。
「プーチン大統領が言うように、今後のビジネスエリアとして、ロシア極東が大きく成長すると思う人は手を上げてほしい」
なんと、手は全く上がらなかった。
それでは「個人的に極東地方に行ったことのある人はいますか」と質問。これには1人の男子学生が手を上げた。