フィリピンのドゥテルテ大統領が、アメリカ大統領などへの暴言を連発して物議を醸している。一時は米比同盟から離脱するようなニュアンスまで醸し出していた。
だが、ドゥテルテ大統領が親中派というのは単純過ぎる見方である。10月18日からの中国訪問を前に、米比同盟関係は維持していくとの意向を明らかにした。
これまで数々の暴言によって、米比同盟を破壊してしまうのではないかと危惧するメディアも少なくなかった。しかし、米軍関係戦略家たちの間では「ドゥテルテ大統領といえども米比同盟を破棄して中国にすり寄っていくほど単純なスタンスをとることはありえない」と考えられていた。
「ドゥテルテ大統領は、『フィリピンの国益にかなうと判断した外国からのオファーはできるだけ受け取った方が、当面は良いに決まっている』という実利的方針を貫こうとしている。そのため、自らが推し進める強硬な“対麻薬戦争”に横やりを入れるオバマ政権には強烈に反駁し、そのような口出しをしない中国からのインフラ整備の申し出などは受け入れようとしているに過ぎない」と多くの米軍戦略家たちは理解してきた。
日本の少なからぬメディアは、ドゥテルテ大統領の祖母が華僑系であったため「親中派である」といったレッテルを貼りたがる傾向がある。だが、前フィリピン大統領アキノ氏は、ドゥテルテ大統領より華僑系の血が濃いにもかかわらず、バリバリの反中派でアメリカ“ベッタリ”であった。