自閉症の長男を筆頭に3人の子供を抱え、社内で最も繁忙な部署の課長に就任。奥さんは肝臓病がもとで入退院を繰り返すうちにうつ病を併発。3度の自殺未遂を繰り返す──。
元東レ経営研究所社長、佐々木常夫さんのサラリーマン人生は壮絶なものがある。
佐々木さんは仕事の重圧と、子供たちの世話、奥さんのケアに押しつぶされそうになり、「何のためにこんなに苦労しているのか」「私の人生は一体なんなのか」と煩悶したそうである。
だが、それでも仕事への情熱を失わなかった。最大限の効果を生み出す自分流の仕事術、マネジメント術を確立し、毎日、定時に仕事を終わらせて帰宅し、家族のケアに当たった。現在は奥さんも完治し、平穏で幸せな生活を送っているという。佐々木さんの、運命を受け止める胆力、逆境を乗り切る精神力にはただただ感嘆するしかない。
本書『働く君に贈る25の言葉』は、そうした過酷な経験を基に、若い社会人に向けて、どう働き、どう生きるべきかを綴った本である。
40代から上の人に共感してほしい
── 社会人になったばかりの甥に25通の手紙で語りかけるというスタイルで書かれています。やはり、これから社会人になる人や、社会人になったばかりの若い人に向けて書いたのですか。
佐々木常夫氏(以下、敬称略) 出版社の思惑としてはそうなんだけど、私は本当はこういう話は若い人には向いていないんじゃないかと思っているんです。
「人は自分を磨いて成長するために働くんだ」なんて、そんなこと言われたって若い人にはピンとこないんじゃないですか。みんな、生活のためとか、出世したいとか、いろいろな欲を持ちながら働いているわけですよ。
そういう人たちにいきなり「人はどう生きるべきか」なんて話をしても、共感を得られないんじゃないか。むしろ反感を持たれるかもしれない。だから出版社の人には、若い人には売れないよって言っていたんです。