2010月8月に、米国政府の科学チームは、漏洩原油の日量は、BPの初期見積もりの60倍以上にあたる6万2000バレル、累計で漏洩した原油の総量は490万バレル(7億8000万リットル)に達すると発表しました。

米国で史上最悪の原油流出事故に

原油 テキサス州に到達、BPは資金確保目当ての新株発行を否定

米ルイジアナ州ベニス近くの海上に浮かぶ、油まみれのカッショクペリカン〔AFPBB News

 今まで米国での最悪の原油流出事故だった、1989年に発生した26万バレル(4100万リットル)の原油を漏洩したエクソンのバルディーズ号によるアラスカ沖原油流出事故を大きく抜き去ったのです。

 さらには米国史上のみならず、340万バレル(5億4000万リットル)の原油を漏洩した過去最大の原油流出事故であった1979年のメキシコのカンペチ湾事故も抜き去り、世界史上最悪の原油漏洩事故となってしまいました*35

 英フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)によると、2010年7月21日時点で、原油回収に利用した化学分散剤の量は、184万ガロン(700万リットル)にも上っています。

 野生動物の被害調査はいまだ終了していないものの、2010年7月末時点で、油が付着したウミガメ189匹、イルカ1頭、鳥1403羽が発見され、さらに、油にまみれた1149羽の鳥が死んでいるのが見つかりました*36

 この野生動物の被害データは氷山の一角でしょうし、未回収と言われる26%の漏洩原油や有毒性を指摘されている化学分散剤が、生態系および食物連鎖に与える影響は未知数です。

カトリーナの被害から完全に抜け出す前に再び大打撃被る

 この自然界への影響に加えて、地域コミュニティーへの影響も見逃せません。メキシコ湾は水産資源の宝庫であり、地域経済の重要な役割を担っています。

 水産資源の年間捕獲金額は6億5000万ドル(585億円)、水産業の年間ビジネスの規模は105億ドル(9450億円)に達していますが、今回の原油事故によって、最悪期には連邦政府管轄漁業水域の約3分の1、メキシコ湾岸の各州政府管轄漁業水域の最大95%が封鎖されてしまいました*37

 さらに、バケーションシーズンの夏の書き入れ時のホテル・レストランなどの観光産業も、一部海水浴場の閉鎖や顧客の減少によって大きな痛手を被りました。

 ここでルイジアナ州について少し触れなければならないでしょう。今回の原油流出事故で、最大の被害を被ったのがルイジアナ州だからです。