近年、エネルギー産業に甚大な影響を与えたいくつかの出来事が発生しました。英BPによるメキシコ湾沖原油流出事故と、米国を中心とした非在来型天然ガスと呼ばれるシェールガスの開発です。
今回と次回の2回の連載にわたり、これらエネルギー産業のマイルストーン的出来事がクリーンエネルギーに与える影響を分析します。
今回は、BPの原油流出事故です。
BP原油流出事故と新しいエネルギーコスト方程式
まず、エネルギーのコストについての考え方を整理します。エネルギーのコストを考える際に、一般消費財の様に、生産コスト、流通コスト、販売コストを合計した供給コストだけでは、単純にコスト比較することはできません。
つまり、供給コストだけをとって、化石燃料がクリーンエネルギーよりコストが低いとは言えないのです。
CO2が地球温暖化の原因であることが科学的に証明されている現在、CO2は社会にとってのコストですから、CO2を排出することへのペナルティー(つまりコスト)もエネルギーコストの要素として考慮しなければなりません。つまり、以下の方程式が成り立ちます(図37)。
しかし、このエネルギーコスト方程式も完全ではないことが、ある大事故によって判明しました。2010年4月に発生したBPによるメキシコ湾原油流出事故です。
約1500メートルの深海にある油田を掘削していた洋上の石油掘削設備が、油田からの高圧メタンガスの暴噴によって火災を起こし、掘削パイプの破損によって、大量の原油がメキシコ湾に流出する大惨事を引き起こしました。
事故発生当初は、BPは油田から流出している原油は日量あたり1000バレルと公表していましたが、日が経つごとに推定流出量が上方修正されました。