しかし、望みもあります。今回のBP原油流出事故は、米国の主要メディアによって、連日ニュースのヘッドラインで“原油流出事故発生から何日目”という見出しとともに事故現状の詳細が報道されました。
石油を得る環境は厳しさを増している
これらの報道が明らかにした今回の事故の2つの事実に、一般の米国国民は衝撃を受けました。
1つ目の事実は、油まみれのペリカンの映像を目にして、改めて知らしめられた原油漏洩事故がもたらす環境、海洋汚染の甚大さ。
2つ目の事実は、我々が日々何気なく使っているガソリンが、遥か1500メートルの海底から掘られた原油から供給されていること。つまり、このような深海の極地まで行かないと、既に石油供給は需要に追いついていないという事実を見せつけられたのです。
要は、我々の現代社会を支える化石燃料の供給システムが、大きなリスクと表裏一体にある“綱渡り”状態にあることに気づかされたのです。
国民のこの気づきが、喉元過ぎれば熱さ忘れるではなく、世論や政治を動かし、新たなエネルギー方程式の運用の確立を導き、クリーンエネルギーが化石燃料と同じ土俵(Level Playing Field)で競争できる環境が作られることを期待したいと思います。
次回は、もう1つのエネルギー産業の画期的な出来事であるシェールガス開発のクリーンエネルギーへの影響を分析します。
*35 = Obama and BP see end to battle, Financial Times
*36 = Fish to fare better than fishermen, Financial Times
*37 = Oil sleuths struggle to assess spill effect, Financial Times
*38 = US Saw Drill Ban Killing Many Jobs, Wall Street Journal
*39 = Action sought after BP safety talk, Financial Times
■これまでの連載とこれからの予定(変更の予定あり)
- 第1部 クリーンエネルギーで世界の覇権を取れ!
- 第1章 今のままでは日本は絶対に勝てない
- 第2章 100年に1度のエネルギー産業大転換
- 第2部 クリーンエネルギーの実像
- 第1章 化石燃料より安くせよ、激化する世界競争
- 第2章 ソーラー、風力、バイオの問題点と解決策
- 第3章 IBM、グーグル、インテルなどが続々参戦
- 第4章 ITの次はエネルギー産業の雄を目指すグーグル
- 第3部 グローバルビジネス最前線
- 第1章 大躍進する中国、投融資額では世界を圧倒
- 第2章 次世代の覇権目指し、手を握る米国と中国
- 第3章 日本の起業家たちよ、ナスダックを目指そう
- 第4章 GEとウォルマートの決断がもたらしたインパクト
- 第5章 米中間選挙で環境は後退? 雇用を最優先へ
- 第4部 クリーンエネルギーと日本
- 第1章 世界のグリーン化は止まらない
- 第2章 日本の戦略
- 第3章 世界競争、待ったなし
あとがき