江戸っ子は昔から金離れのいいが信条だ。「江戸っ子の生まれそこない金を貯め」っていうくらいだから、金が入っても吉原に通い詰めたり芝居につぎ込んだりで、「宵越しの金を持たない」って言って粋がった。

 金の使い方には実は2種類あって、「生きた金」と「死んだ金」っていうのがある。

 本を買ったり、設備投資したり、親の面倒を看たり・・・。必要なことや、自分に役に立つことにお金を使うのは、生きた金。逆に、まったく役に立たないことに金をつぎ込むのは、死に金だ。

 生きた金を使うことを「金離れがいい」っていうが、死に金をつぎ込むことを「金遣いが荒い」っていうんだよ。

 たくさん貯め込んでいながら、必要なものにも金を出さないのは「ケチ」といって、古今東西、嫌われる。いくら莫大な富があっても、使わなければ、カネはないのと一緒。生き金も死んでしまうよ。ケチと「倹約」は似て非なるもので、倹約とは無駄金を使わないことだ。

泡銭は一気にパァっと使ってしまった方がいい

 銀行員は毎日、仕事でお金を数えているが、仕事のお金に手を出してはいけない。仕事で扱う金は死んだ金。だが、月末に給料となって口座に振り込まれた金は、自分で自由に使える。これで生きた金になる。

 「金は天下の回りもの」っていうけど、お金が世間を回っているということ以外に、もう1つ意味がある。生きた金を使えば、再びまた自分に戻ってくる、っていうことだ。一方、死んだ金には呪いがあるんだよ。

 政治資金規正法違反のお金や、企業のヤミ献金など違法のカネに手をつければ、隠しても発覚するのが世の常。そうなれば、その人はもう一生浮かばれない。

 女遊びやギャンブルにつぎ込むのも、死んだ金だ。心を濁らせ、家庭など大切なものを壊してしまうから、気をつけないとな。