国際関係において戦争が殴り合いであるとすれば、冷戦は口喧嘩のようなものである。20世紀、世界は殴り合いと口喧嘩の両方を経験したが、21世紀に入ってから国際関係は新たな結合の形に向かっている。
かつて、戦争は国家の「利益」を最大化する行動だった。冷戦はどちらかと言えば「価値観」(イデオロギー)を軸とする戦いだった。今の国際関係は、表面的には価値観で動きながら、国益を追求することが真の目的になっている。
英国のEU離脱はまさかの結果であり、当事者(英国人)以外のほとんどが予想できなかった。EUから離脱しても英国にとってメリットはほとんどないと思われていた。しかし、当の英国では、EUにとどまることこそが英国に不利益をもたらすと感じる人が多かった。まさに、表面的な価値観よりも国益を追求した結果であった。
5月に開かれた伊勢志摩サミットでは、英国のEU離脱についてほとんど真剣に議論されなかった。これは今回のサミットの大きな失敗と言えるだろう。
英国のEU離脱は英国にとっての危機ではなく、EUにとっての危機である。今となっては、そもそもEUの結成に無理があったと言わざるを得ない。英国の離脱でEUの弱体化は避けられなくなった。日本にとっても英国のEU離脱は対岸の火事ではない。欧州の危機は東アジアの秩序を乱すことになる可能性が高いからである。