南シナ海でベトナムに強硬姿勢、中国の狙いは 専門家が分析

南シナ海でベトナムの船艇に放水する中国海警局船〔AFPBB News

 中国は力しか信じない国である。力の主体は軍隊であり、その軍隊が効率的に機能するように改革を進めている。

 同時に、用廃にした軍艦は海上警備局に払い下げ、海上警備の強化を図っている。海軍でないにもかかわらず76ミリ砲などを装備した大型監視艦は、1万トンを超す軍艦となんら変わらない。

 南シナ海では領有権問題でフィリピンやベトナムなどと係争しているが、その間にも一方的に埋め立てなどを行って人工島を造成し、実効支配の強化と軍事基地化を進めている。

貸す耳を持たない中国

 南シナ海だけに焦点が集まりやすいが、尖閣諸島や小笠原周辺海域に雲霞のごとく数百隻もの漁船が押し寄せる行動は漁船員単独の行動ではなく、暗々裏に国家の意志が作用しているとみるべきであろう。

 こうした漁船も日本の対応状況などを含めた情報収集任務を付与されているであろうが、本来の情報収集艦は日本周辺、さらには太平洋の西半分で行動する潜水艦のための情報収集を精力的に行っている。

 人工島造成では、掘削活動などを非難する米国に譲歩して一時的に撤退(中国は完了と呼称)するかのような行動を見せるが、注意が逸らされている間に掘削活動を再開するなど、どこまでも国際社会をコケにする状況である。

 領有権問題を国際裁判で決着しようというフィリピンなどの提案にも耳を貸そうとしない。

 最近、各国の海洋科学者から埋め立て工事が環境破壊につながっているという批判(JBpress「中国は南シナ海を『死の海』にするつもりか」)の声が上がっているが、一向に気に掛けるようにも思えない。

 国際法は「先占」の法理であるが、中国は「2000年前に発見」した歴史や「古代からの領土」などと称して、法治主義の現代社会を煙に巻く作戦一点張りである。とても近現代の国際法が通じるような相手ではないし、力のみを信奉する国である。

 こうした国に対しては、残念ながら理論ではなく力の対応しか通じない。中国が条約などは平気で破り、力しか信じない国であることはJBpress拙論「中国史が指南する、南シナ海の次は尖閣奪取」で述べた通りである。