団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年問題。医療、介護の現場が病院から自宅に移行しようとしているなか、厚生労働省は「地域包括ケアシステム」の実現を目指している。
「地域包括ケアシステム」とは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステム。
疾病を抱えていても、自宅など住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けるためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要(厚生労働省 在宅医療・介護推進プロジェクトチーム発表資料より)、とするものである。
様々な機関が連携し、包括的かつ継続的なケアを提供するのは、例えシステム上のことはクリアできたとしても、人的な部分がすんなり実現できるかというとそう簡単なものではない。
これまでに看取った人は2800人
独居老人、孤独死、介護離職・・・など、将来に対して不安を感じさせる要素が多い現状のなか、地域医療の現場で、「患者に寄り添う」とは具体的にどう寄り添うことなのかに悩んでいるのは実は、医療・介護に携わっている人たちだ。
日々弱って死に向かう自分を受け入れられずにいる患者さんたちから、「早く楽にしてほしい」「生きているのが辛い。終わりが見えない」「なんで自分がこんな病気になったのか?」などの苦しみの声にどう答えていいのか――。
その明確な答えが、介護医療の教科書に載っているわけではない。
医療・介護の現場の中には、「あの看取り方で本当に良かったのだろうか、もっと良い看取り方があったのではないか」という思いから、関わっていく自信を失い、苦手意識を持つ人も増えていると言う。
もちろん何より、人生最期の時を迎える患者本人と、その家族の悩みは深い。「家族」や「近しい人」が亡くなることは頭で理解できても、心で受け止めていくことは難しい。まして、老老介護となり金銭的な問題や体力的な問題があればなおのこと負担は大きい。
それらとどう向き合えばいいのだろうか。
今までに2800人の方を看取ってきためぐみ在宅クリニック院長・ホスピス医の小澤竹俊さんは、『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』(アスコム)を上梓し、それらの悩みに対して答える。
人生最後のときが近づくというのは究極の苦しみだが、その苦しみの中から、自分が生きてきた本当の意味に気づき、幸せとは何かを知るのだという。そしてそれは死ぬためではなく、患者さんが今を生きていくための支えになるのだと。
亡くなっていく人たちばかりを見る仕事はとても辛いのではないだろうか。それを職業にしようとしたのは、何がきっかけなのだろうか。小澤先生に話を聞いた。